日本IPBAの会顧問(前会長)
長島・大野・常松法律事務所
IPBAは日本人によって創設され、にもかかわらず国際的に大成功をおさめている数少ない国際組織です。これは司法界にとどまらず学界や財界を見渡しても他に例を見ない快挙であると言って良いでしょう。この成功は、1991年の創立時における濱田邦夫先生や三宅能生先生をはじめとする諸先生方の情熱とご尽力に負うところが大きいことは勿論ですが、多くのアジアの法曹達の賛同と支持を得られた時代的背景も大きいと考えられます。まさにアジアの時代の幕開けというベストのタイミングでIPBAの歴史が始まった訳です。
アジアの成長はその後さらに加速し、21世紀はアジアの時代と言われるまでになりました。多くの日本企業の今後の持続的成長はそのアジアにおける成功に大きく依存していると思います。このような時代の変化のなかで、日本の弁護士、企業法務などの法曹(特に若手法曹)の新たな役割として、日本企業のアジア諸国での活動をいかに実質的に意味のある形でサポートできるかということがあります。他国の法律が適用される場面で意味のあるサポートをするためには伝統的な法技術的な助言という枠を超えて、アジア諸国の現実や日本企業のビジネス・ニーズを的確に理解し、より良い方向性を提言できる能力を身につける必要があります。
IPBAでは幸いなことに多くの有能なアジア諸国の法曹達と人的信頼関係を築く機会に恵まれています。また現在日本IPBAの会を中心に進められているアジア比較法研究会の活動のように情報交換や共同研究の機会にも恵まれています。年次総会をはじめとするIPBAの様々な活動に会員の皆様が積極的に参加することによって、新たなニーズに対応できる人脈の形成や自己研鑽に役立てて欲しいと願うものです。
日本IPBAの会は、IPBAの会員である日本の法曹の親睦を深め、併せて創立時からのIPBAにおける日本人のリーダーシップを維持するため様々な形でIPBAの発展に貢献することを目指しています。発展途上国からの総会参加を財務面でサポートするJapan Fundの創設もその一例ですが、人的貢献としてIPBAの各種委員会により多くの日本人会員が積極的に参加いただき委員長や副委員長に就任していただくことも重要だと思います。
IPBA会員間の交流に加えて、近年外部との交流の機会も増えています。企業法務の人達との共同作業やAPECとの友好協定に基づく外交当局との共同活動等がその例です。皆様が日常業務を通じて経験できる世界や人間関係の制約を離れて、組織・業種・年齢の垣根を越えた交流の機会を持てることもIPBAの会員であることの大きなメリットではないかと思います。
近年世界における日本の地位の地盤低下には目を覆うものがありますが、幸いなことにIPBAのアジア諸国の会員間では依然として日本にたいする期待は大きいと思います。このような期待が日本の若手法曹達に引き継がれることを願ってやみません。最近日本の若手法曹達の積極的活動には目覚ましいものがあると感じていますが、さらに日本IPBAの会のなかで新たにスタートできることはないか、アジア諸国の会員と共同してできる活動はないか、前向きに考えて欲しいと思います。